研究概要 |
ソバの生育と収量に及ぼす環境の影響を,夏型秋型の品種生態の差異も含めて,モジュール別に検討し,世界各地へのソバ栽培の導入および日本における安定多収に関する知見を得ようとした.1.夏型秋型の品種生態の差異:13〜16時間の範囲で日長が長くなると,開花始期が遅れ,咲上がり速度が低下し,茎の伸長期間が延長し,1茎上の花房数,各花房の分岐の発生,小花房数,花房および開花数が増加するが,結実率が低下して子実数が減少した.花房が長く分岐の発生が多い特徴を持つカナダの品種でも日本の秋栽培のような短日条件では日本の品種と同様の生育をした.これらの生長パラメータは結実率を除いて開花始期前の日長時間に影響を受けた.日長変化に伴う成長パラメータの変化の様相はパラメータの種類によって異なり,夏型秋型の品種間差異が明確なパラメータは(1)主茎の伸長経過,(2)開花始期と初花節,(3)咲き上がり速度,(4)子実数と結実率の4種に分類された.これらの品種間差異には環境要因のうち温度ではなく日長が深く関係しており,生長調節物質ではオーキシン,ジベレリン,サイトカイニンだけでなくABAおよびジャスモン酸も関与の可能性が低かった.2.生育と収量におよぼす環境の影響:1本の茎上では上位節花房ほど,主茎に対して側枝のほうが,側枝では高次位側枝ほど,開花数と子実数が少ないだけでなく,結実率も低くなり,花房は位置により開花結実状況が異なった.施肥量が多くなると,倒伏に強く影響する程ではないが茎長が増加し,高次位側枝が発生し,その側枝上の開花数と結実数が増加することによって,株当り収量が増加した.温度および土壌の過湿の影響については播種直後から生育初期の影響が大きかった.また,ソバの訪花昆虫では飛来型昆虫のミツバチやハナアブが注目されているが,アリのような歩行型昆虫の受粉効果も無視できないくらい大きかった.
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