研究概要 |
最初に,果実の果肉組織のアポプラスト液とシンプラスト液を分別する方法を検討した結果,遠心機を用いることによって,2つの液をおおまかに分別することができた。 この方法を用いて,リンゴ果実のみつ症状の発生機構について検討を行った。‘ふじ'果実では,適期30日前にみつ症状の発生が認められ,その後,成熟が進むにつれて症状が拡大した。アポプラスト液のスクロース,フルクトースおよびグルコース濃度の変化がわずかであったのに対して,ソルビトール濃度は成熟に伴い著しく増加した。シンプラスト液では,糖濃度の変化は少なかった。これに対して,みつ症状の発生しない‘陽光'と‘王林'では,アポプラスト液のソルビトール濃度が成熟中に増加したものの,‘ふじ'と比較すると,収穫適期時の含量は,1/4から1/5程度であった。 次に,‘ふじ'果実の離層近傍部の環状剥皮処理がみつ症状の発達と糖の蓄積におよぼす影響を検討した。その結果,無処理区では,果実の成熟に伴いみつ症状が発達したのに対して,環状剥皮処理区では発達しなかった。糖濃度について無処理区では,アポプラスト液とシンプラスト液ともに,果実の成熟に伴ってソルビトール濃度が急激に増加した。この増加は,とりわけアポプラスト液で顕著であった。これに対して環状剥皮区では,アポプラスト液とシンプラスト液ともに,ソルビトール濃度は実験期間中,常に低いレベルで推移した。 以上の結果より,リンゴ果実のみつ症状の発達には,アポプラストへのソルビトールの蓄積が関与していると考えられた。 最後にカキを用いた実験では,可溶性タンニン含量はシンプラスト液よりアポプラスト液の方で高いことが確認された。さらに,炭酸ガス脱渋区では1日目に急激に蓄積したアセトアルデヒドによってアポプラスト液に含まれる可溶性タンニンが不溶化し,脱渋が速やかに進行することが示された。
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