研究概要 |
1.葯からのカルス誘導および子球再生のための培養法について (1)植物成長調節物質(オーキシンやサイトカイニン)の種類や濃度によって'カサブランカ'の葯培養反応が異なった. (2)9%ショ糖は'コネチカットキング'葯からのカルス形成を促進した.1/2MS+6%ショ糖とMS+9%ショ糖の固形培地のみにおいて'カサブランカ'の葯由来カルスが誘導された. (3)'エンチャントメント'の葯由来カルス誘導率は,三角フラスコが30%,円錐形広口フラスコが53%であり,培養容器間の差異があった. (4)ユリの品種間および外植体の種類の間でカルス形成に差があった.葯培養では,'エンチャントメント'は'カサブランカ'より高いカルス誘導率を示した.一方,花糸培養では,`カサブランカ'はカルス誘導率が高かった. (5)葯切断培養や葯維管束の除去はカルス形成を誘導することができなかった. 2.ウイルスの検出と局在性について (1)種類のユリにおいてRT-PCR法によるLSV, CMVおよびLMoVの検出に成功した.また,免疫組織化学染色法による植物体や外植体内のウイルス分布を調査するとき,凍結切片では材料調整が困難であるため,PEGの代わりにポリエステルワックスを使用した結果,室温下での切片作成が容易にできることを明らかにした. (2)ELISA法によるLSVおよびCMVの相対濃度(吸光度)を測定した.'エンチャントメント'葯では,LSVの濃度が低く,CMVが他器官と同等もしくは低い相対濃度を示した. (3)免疫組織化学染色法によるウイルス局在性を調査した結果,LSVとCMVは葯の維管束近傍の細胞に局在し,また,ウイルス抗原が見られない葯壁部分から粒状カルスが誘導され,多数のウイルスフリーカルスが獲得された.さらに,カルス増殖の過程でウイルスフリーカルスが多数生産された. 3.葯培養によるウイルスフリー球生産の効率化について (1)葯と花糸の接合部からのカルスと花糸カルスに比べて,葯壁由来のカルスとその再生子球はウイルス検出率が低かった. (2)カルスの培養期間が長くなるとウイルス検出率が減少した.葯壁由来のカルスの培養期間を延長することによりウイルスフリー球の生産効率を向上した.
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