研究概要 |
カキ果実は、細胞壁成分の分解を伴って収穫後に急速に軟化する。カキ果実の軟化機構を解明するために、エチレン作用阻害剤、1-MCPと分子生物学的手法を用いて解析した。カキ果実からACC合成酵素(ACS)、ACC酸化酵素(ACO)、PG、Cellulase(Cel)およびExpansin(Exp)遺伝子をクローニングし、発現特性を調査した。 収穫後のカキ果実では、いずれの器官でもACSおよびACO遺伝子の発現を伴って、エチレン生成が誘導されるが、ヘタ部以外の器官では1-MCP処理はエチレン生成と関連酵素遺伝子の発現を抑制した。しかし、ヘタ部では1-MCP処理による抑制は見られず、有孔ポリ袋包装による水ストレスの緩和処理は、ヘタ部のエチレン生成とDK-ACS2の発現誘導を顕著に遅延させた。これらの結果から、カキ果実のエチレン生成は、水ストレスによるヘタ部でのDK-ACS2の発現誘導から始まり、このエチレンが他の果実器官に拡散、二次的シグナルして各部位での自己触媒的エチレン生成を刺激し、急速な軟化に至ると考えられる。 カキ果実では収穫後、エチレン生成の誘導と軟化に伴って、細胞壁分解酵素遺伝子であるDK-Cel1,DK-PG1,DK-Exp2の発現が顕著に高まった。1-MCP処理はこれらの遺伝子発現と果実軟化を顕著に遅延し、プロピレン処理は逆に促進した。したがって、カキ果実の軟化はエチレンに依存したDK-Cel1,DK-PG1およびDK-Exp2の発現と密接に関連していることが明らかになった。 炭酸ガス脱渋処理と組み合わせた1-MCP処理の品質保持効果を検討した。無処理果実では収穫後5日以内に全ての果実が軟化したのに対し、100ppm1-MCPを16-48時間処理すると、'刀根早生'では棚持ち期間が12日間、'西条'では16日間に延長された。収穫から1-MCP処理までの時間が12時間までであれば処理の効果は失われなかった。これらのことから、1-MCP処理はカキ果実の実用的な流通中の品質保持技術になることが明らかになった。
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