配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2004年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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研究概要 |
乾性的な地域である瀬戸内海沿岸地域のマツ林における里山の創出と保全を目的として,マツ材線虫病被害林の被害発生状況とその要因,マツ材線虫病被害林の林分動態,および里山管理による更新誘導について検討した。マツ材線虫病被害林の発生と立地との関係では,斜面上部の乾性的な立地においてマツ材線虫病被害率が低い原因をマツ樹の生理的特性から検討した。その結果,乾性的な立地のマツ樹では,急性の水ストレスに対して俊敏に気孔を閉鎖して水分損失を抑制する一方,光合成効率が高く,気孔コンダクタンスが小さな時でも高い光合成速度を維持できることを明らかにした。したがって,そのような水ストレス耐性によって,乾性的な立地のマツではマツ材線虫病に対する感受性が低いことが示唆された。マツ材線虫病被害林の動態を調べるため,被害軽度林分,重度被害後放置林分,および重度被害後伐倒駆除林分で林分動態を比較した。その結果,マツ材線虫病被害は大面積で林冠層を欠損させるかく乱であるが,撹乱強度は小さいかく乱であり,林床に強度の撹乱を及ぼす伐倒駆除処理がなければ,樹種の侵入頻度が小さいことを明らかにした。そこで,マツ材線虫病被害林において林内下層木の除去,および林床有機物層除去という里山管理を実施し,マツ残存木の成長とマツ実生の更新を検討した。林冠を構成するマツ残存木では,林内下層木除去によって他樹種による被圧から解放され,成長が促進された。林内下層木の除去,および林床有機物層除去を行ったほうが,マツ実生の発生率と生残率が高く成長量が大きかった。有機物層が残存する林床では,実生の根系が有機物層に留まっている実生発生初期に死亡率が高く,林床有機物層がマツ実生に乾燥や菌害などのストレスを与えていることを明らかにした。以上より,マツ材線虫病被害林では,かつての里山管理がマツ個体群の維持にとって有効であることを明らかにした。
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