研究概要 |
既に培養法と細胞構成成分分析法により解析が行われた実際の水田圃場を対象とし,その圃場から分離・同定した菌株を活用して,メタン生成古細菌の16S rDNAを対象とした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法を確立し,水田土壌中のメタン生成古細菌群集を解析することを目的とした。これまで用いられてきた古細菌用のプライマーを基に,水田土壌からの分離菌株およびデータベースに登録されているメタン生成古細菌の16S rDNAの塩基配列との比較を行い,メタン生成古細菌を対象としたPCR-DGGE用のプライマーを5種類(forward2種類,reverse3種類)設計した。これらのプライマーを用いて,13種類の純粋培養菌株から抽出したゲノムDNAについて,PCR増幅およびDGGEの条件を検討した。その結果,2組のブライマー対(0357F-GC,0691R;0348F-GC,0691R)でDGGE解析が可能であったが,プライマー対0348F-GC,0691Rではいくつかのメタン生成古細菌以外の古細菌の16S rDNAが増幅された。この2組のプライマー対を用い,メタン生成古細菌を分離した圃場(筑後)および比較対照の圃場(安城)の水田土壌試料より抽出したDNAを対象にDGGEを行ったところ明瞭なパターンが得られ,DGGE解析が可能であった。41のバンドを切り出し,塩基配列を決定したところ,全てメタン生成古細菌由来の16S rDNAであり,Methanomicrobiales, MethanosarcinalesおよびRice clusterに近縁であった。以上の結果より,水田土壌中のメタン生成古細菌群集の解析には,今回確立したプライマー対0357F-GC,0691Rを用いたPCR-DGGE法が最適であると考えられた。現在,本方法により水田圃場におけるメタン生成古細菌群の季節変動の解析を行っている。
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