研究概要 |
本研究では(1)ニンジン植物からの細胞周期マーカー遺伝子の単離,(2)ニンジン培養細胞の細胞周期同調系の確立,(3)同調系を用いたマーカー遺伝子の発現時期の確認,(4)細胞周期におよぼすジベレリン合成阻害剤の影響,の4点について研究を進めた.材料にはニンジン植物(Daucus carota L.cv.US-Harumakigosun)を用い,培養細胞として体細胞胚形成能を有するEC系統(embryogenic cell line)と細胞分裂のみを続けるNC系統(non-embryogenic cell line)の2系統を用いた.細胞周期マーカー遺伝子としてCyclin D(G1期マーカー),PCNA(Proliferating cell nuclear antigen, S期マーカー),Cyclin B(G2期マーカー),ICK(Inhibitor of cyclin dependent protein Kinase,細胞周期停止マーカー)に注目し,合計8種類の遺伝子ホモログを単離した.細胞周期同調系にはNC細胞にS期阻害剤であるハイドロキシウレアを処理することで12-20%程度の同調化に成功した.同系を用いて上記マーカー遺伝子の発現を調べ,細胞周期の1サイクルは24〜30時間であり,G2+M期:約12時間,M+G1期:約10時間,S期:約5時間,と類推された.また,増殖中のNC細胞にジベレリン合成阻害剤,ウニコナゾールを添加した場合,有為な増殖阻害が起こることが観察された.今後は同調系の精度をあげ,ウニコナゾールによる阻害点を明らかにしていく予定である.
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