研究概要 |
本研究ではポリエチレングリコール(PEG)ポリビニルアルコール(PVA)資化性Sphingomonas属細菌を用いて、専ら分子生物学的なアプローチで分解遺伝子とそのオペロン構成及び発現解析を行った。 PEG脱水素酵素遺伝子(pegA)を中心に上下流合わせて約14kbの塩基配列を解読した。ORFはtransposases (A, B), Ton B receptor, aldehyde dehydrogenase, permease, acylCoA ligase, Ara C-type regulator, transposases (A, B)に該当し、この配列はS. terraeおよびS. macrogoltabidus strains 103 & 203に99%以上の相同性で保存さていた。これらの遺伝子群はトランスポゾンを除いてPEG培地で誘導的に発現した。また、逆向きに挿入されたAra C-type regulatorを除いてmonocistronicに発現することをdot-blot hybridizationおよびRT-PCRで確認し、5つがPEG分解オペロンを構成すると判断した。一方、S. macrogoltabidus 203のpegA上流には別のトランスポゾンが挿入され、pegAのの構成的な発現はトランスポゾンの挿入でpromoter領域が分断されたものと結論づけた。他方、aldehyde dehydrogenase遺伝子の発現タンパク質について酵素の特性を調べ、PEG-aldehyde dehydrogenaseであることを確認した。本酵素は結合型のNADPを有するnicotinoprotein aldehyde dehydrogenaseとしてはじめての報告である。 他方、酸化PVA加水分解酵素(OPH)を精製し、精製酵素のアミノ酸配列を下に遺伝子をクローニングした。遺伝子は大腸菌で発現できたが、酵素はinclusion bodyを形成した。この遺伝子の下流にPVA dehydrogenase (pvaA)とcytochrome cのORFが存在することを確認した。遺伝子ophとpvaA間にはほとんどspaceがなく、共発現していると考えられる。 表題としてあげた細菌の細胞表層構造はPEG(PVA)培地と栄養培地では電顕観察で大きく異なる。この変化とオペロンの遺伝子構成を結論づけるには至らなかったが、さらにそれぞれの上下流の塩基配列を解読中であり、細胞表層にコードされていると思われる遺伝子が含まれるので、これらの機能解析を進めて細胞表層における高分子の認識/取込みと遺伝子制御を関連づけるのが今後の課題である。
|