研究概要 |
ワインタンパク質は、果汁、種子、果皮、及び酵母に由来するが、それらのほとんどは果汁タンパク質(全タンパク質の約90%)を起源とした。それらはすべて糖タンパク質であった。我々が試醸した赤白ワイン及び市販の国産赤白ワインの全タンパク質量は29.8〜107.1mg/Lの範囲にあり、そのうちの13.6〜36.4mg/Lは高度の澱下げ処理後でさえ安定に溶存した。タンパク質はワイン中で多糖あるいはタンニンと結合し、複合体あるいは類似体を形成し、それらによって安定に存在した。 硫安塩析とSephadex G-25クロマトグラフィーによってセミヨンワインからタンパク質を分離した。全フェノールはセミヨン種子から50%エタノールで抽出した。種子全フェノールの珪藻土クロマトグラフィーによって、4つのフェノール画分(カテキン,カテキンダイマー、タンニンオリゴマーとポリマー)を分別した。タンパク質,カテキン,カテキンダイマーをそれぞれ単独でワイン様モデル溶液(pH3の10%エタノール水溶液)に溶かし,20℃で3〜48時間貯蔵しても何ら変化しなかった。しかし,全フェノール及びタンニンオリゴマーとポリマーの場合にはかなりの沈殿が生じた。そこで。カテキンとダイマーを用いて、それらの呈味に及ぼすワインタンパク質の影響を官能学的に分析した。ワインタンパク質は口中の味覚レセプター(受容体)と相互作用し,それらの有用性を減少させることによって,カテキンやダイマーの味を減少させるという仮説を立てた。低濃度のフェノールとタンパク質が用いられたとき,この仮説を裏付ける結果となった。しかし,高濃度では,反対の傾向が観察された。高濃度のタンパク質は,それら自身の味を加えることによって全体の味の強さを増すことが仮定された。
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