研究課題
基盤研究(C)
生活習慣病の危険因子である胆満の発生おいて、末梢組織で中心的な役割を果たす脂肪細胞の質的変化におけるエイコサノイド類の生合成調節と代謝産物の細胞での作用を解明する研究の一環として、脂肪細胞のライフサイクルの変化におけるアラキドン酸カスケード反応経路に関与する生合成酵素、特に、シクロオキシゲナーゼ系酵素のアイソフォーム類の遺伝子発現や内因性エイコサノイド類の役割を研究することを計画した。そのために、哺乳動物培養細胞系の特定の培養条件で、脂肪細胞に分化誘導するマウス3T3-L1前駆脂肪細胞株を利用した研究を実施した。その結果、脂肪細胞の分化誘導や肥大の過程で重要な作用を示す核内受容体のペルオキシソーム増殖剤応答性因子(PPAR)γの活性化因子とされるプロスタグランジンJ_2誘導体の生成に至る経路に関与する生合成酵素アイソフォームの特異的な遺伝子発現調節機構を明らかにした。脂肪細胞のライフサイクルの時期に応じて、異なる種類のプロスタノイド類が生成し、また、生成される化合物により、プログラム細胞死や脂肪細胞の分化誘導における異なる役割も解明した。さらに、食用の油脂に由来する特殊な脂肪酸であるニガウリ由来の共役脂肪酸による前駆脂肪細胞での腫瘍壊死因子-αによるアポトーシス誘導作用の増強作用を見出した。さらに、植物のジテルペノイドであるアビエチン酸による脂肪細胞の分化誘導の促進作用が発見された。その作用機構を検討した結果、核内受容体のPPARγの活性化を介することを証明した。このように、今回の哺乳動物細胞培養系を用いた実験系は、機能性食品と期待される脂質分子の検索と同定にも非常に有用であった。加えて、食用トチノミのサポニン類の化学構造を解明し、それらの抗肥満や糖尿病予防に関連する生物活性も明らかにした。
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