研究概要 |
体内に植物ステロールを高蓄積するSHRSPラットにおいて、ABCG5およびG8の遺伝子配列の変異を調べ、ABCG5の583番目のグリシンがシステインに変異していることを突き止めた。この変異により、ABCG5,G8のステロール排出機構が不全し、植物ステロールが体内へ蓄積するものと推定される。次に、SHRSPラットのABCG5およびG8の機能がどの程度不全を起こしているのかを検討した。ABCG5,G8の発現を刺激するLiver X receptor (LXR) agonistをSHRSPラットに与え、正常ラットの場合と、ABCG5,G8の発現および植物ステロールの蓄積を比較した。正常ラットにLXR agonistを投与すると、ABCG5,G8の発現が亢進し、植物ステロールの排出が増加するため、肝臓への蓄積は減少した。しかし、SHRSPラットでは、植物ステロールの肝臓への蓄積の減少はわずかであり、ABCG5,G8はほとんど機能していないと判断された。小腸でのABCG5,G8の発現はLXR agonist投与により、正常、SHRSPラット共に増加したが、肝臓では、正常ラットでは増加したものの、SHRSPラットでは増加が認められなかった。LXR agonistにより発現が増加するSREBP-1や脂肪酸合成酵素のmRNA発現は、SHRSPラット肝臓で増加が認められたことから、ABCG5、G8は特にLXR agonistの影響を受けにくいと考えられた。
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