研究課題/領域番号 |
14560113
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
林学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 健二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (30208954)
|
研究期間 (年度) |
2002 – 2003
|
研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
|
配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2002年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
|
キーワード | 黄土高原 / 耐乾性 / 安定同位体 / δ13C / 水利用効率 / Pinus tabulaeformis / Robinia pseudoacacia / 降水量 / 年輪 / 光合成 |
研究概要 |
中国黄土高原は年降水量200〜600mm前後の半乾燥地であり、原植生は森林および草原からなると推定されているが、有史以来の農耕や牧畜によって植生は破壊され、ほとんどが畑および牧草地となっている。降水は夏季に集中するため、侵食を受けやすい黄土丘陵には大規模なガリーや崩壊が発達し、砂漠化の危険にさらされている。 本研究では、黄土高原のうちもっとも黄土が厚く堆積しており侵食量も大きい陜西省北部地域を対象とし、そこに生育する樹木の耐乾性機構を調べるために、植生調査および標本の採取を行った。植生は、陝西省の南から北に向かって降水量が減少するにつれて単純化し、森林の現存面積も減少した。南から北へ、宜君、黄陵、安塞、楡林の各地点においてコドラート法による植生調査および植物採集にもとづくフロラ調査を行った結果、アブラマツ(Pinus tabulaefcrmis)や小葉楊(Populus simonii)をはじめ、多くの樹種が健全に生育していることが確認された。また、モウス沙漠に隣接する黄土高原の北端にあたる楡林においては、流動砂丘も多くみられたが、植林されたポプラ類やビャクシン類などの生育は旺盛であった。 現地調査(2003年9月)と並行して、各地気象台において過去20年間の月平均気温および月降水量のデータを収集した。また、現地調査において複数地点においてみられた代表的な樹種から円板または成長錐コアを採取し、年輪の春材と夏材に分けて、年輪幅を測定するとともに、セルロースを抽出して、炭素安定同位体比を測定した。 その結果、油松においては早材のδ13Cと気象条件との間に明確な関係は見出せなかったが、晩材のδ13Cは当年1月から9月の気温および5月から9月の降水量と高い相関がみられた。ハリエンジュについては、早材は前年1月から9月の気温および当年6月から9月の降水量、晩材は前年10月から当年9月の気温および前年10月から当年12月までの降水量と相関がみられた。 一方、年輪幅に基づく成長解析の結果、年輪成長は当年の降水量および気温とは明確な関係がみらなかった。 アブラマツとハリエンジュを比較すると、アブラマツは成長は遅いが、δ13Cからみた水利用効率が高いことが明らかにされ、蒸散量の大きいハリエンジュは、アブラマツに比べて乾燥の厳しい地域には適さないことが示唆された。 以上の結果は、2004年4月および2005年4月に行われる日本林学会大会において発表するとともに、学術雑誌へ投稿を準備中である。
|