研究概要 |
本研究の目的は、森林の伐採が表層崩壊発生に与える影響を、現地観測・調査及び数値解析の手法を用いて評価することにある。崩壊発生プロセスの解明のためには、長期の(1)伐採による樹木根系の腐朽による土質強度変化の把握,(2)皆伐による斜面土層内における水分変化の把握の他に、崩壊発生時におけるリアルタイムモニタリングが必要であり、このための現地観測システムを構築し、これによって森林伐採後の地表面変位及び降雨に対する土壌水分,地下水位の応答特性変化の時系列情報を取得し、森林伐採が斜面に与える影響を明らかにし、森林伐採が表層崩壊発生に与える影響を評価することをその目的としている。 本研究においては、千葉演習林袋山流域内の崩壊の危険性が高いと考えられる皆伐跡地斜面を対象に、 (A)インターネットカメラによる画像モニタリング, (B)斜面土層内の傾斜モニタリング, (C)気象・水文モニタリング(降雨,気温,土壌水分,地下水位) の3項目からなるモニタリングシステムの適用試験を行っている。モニタリングの結果から、斜面土層内の傾斜変動は、鋭敏な反応を示し、崩壊発生時刻の詳細な同定が可能であることが確認された。 また森林伐採跡地においては、森林伐採による遮断蒸発及び蒸散量の減少により伐採前と比較して斜面上部の表層部分が乾燥状態に移行し,斜面下部がより湿潤な状態にあることを把握した。 土質強度については表層土層から採取したサンプル一面せん断試験を行い、根系の有無による土質強度変化を把握した。以上の観測結果及び実験結果をもとに、数値実験として有限要素法による斜面安定解析を行い崩壊発生危険部位のより詳細な特定を行った。その結果、土質強度に関しては、基盤と表層土層の土質強度の違いが、崩壊発生部位に変化を与えること,および斜面下部における地下水発生が斜面安全率を大きく減少させ、ひずみの集中が斜面下部に卓越して現れることが確認された。
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