研究概要 |
3カ年の研究期間中以下の方面からの研究を行い,それぞれにおいて述べるような成果をあげた. (1)既知成分の定性,定量分析 テーダマツの材線虫病抵抗性成分(ピノシルビンおよびピノシルビンモノメチルエーテル)を合成し,誘導抵抗性発現木と対照木についてそれらの化合物の存在の有無,量的比較を行った.HPLを用いた定量分析の結果,ピノシルビンモノメチルエーテルの検量線を用いた定量分析の結果誘導抵抗性を生じたアカマツ内樹皮の含量がコントロール材より若干増加していることが明らかになった. (2)ピノシルビン類縁体の合成 ピノシルビン類の線虫に対する活性を調べるため各種ピノシルビン誘導体を合成し線虫に対する活性試験を行い構造活性相関の検討を加えた.ピノシルビン,ピノシルビンモノメチルエーテルの二重結合の還元体では殺線虫活性が見られなかった.また,3-ヒドロキシ体,3-ヒドロキシ-4-メトキシタイ,4-ヒドロキシ-3-メトキシ体,3-ヒドロキシ-4-フロロ体,4-ヒドロキシ-3-フロロ体,4-フロロ-3-メトキシ体を合成し,殺線虫活性を検討した.この結果,3-ヒドロキシ体,3-ヒドロキシ-4-メトキシタイ,3-ヒドロキシ-4-フロロ体,4-フロロ-3-メトキシ体に強い殺線虫活性が認められた.これは3位の水酸基の存在が殺線虫活性に必要であることを示している.しかし,水酸基のない4-フロロ-3-メトキシ体に強い活性が見出されたことは興味深い. (3)生物試験として線虫の種類による伝播速度と感受性の差を検討した.アカマツ林内における線虫の分散能力と生きた核の分散阻害効果に対する感受性は線虫のアイソレト間で異なることが分かった.
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