研究概要 |
在来軸組構法耐力壁ならびに2層構造物について仮動的水平加力実験を行い、耐力壁単体の地震応答および2層構造物における各層の剛性が構造物の地震応答に及ぼす影響を調べた。耐力壁試験体は巾3000mm,高さ3000mmの合板張り耐力壁で、2層構造物は、これを組み合わせた梁間方向、桁行き方向3000mm、1、2階の階高が約3000mmの架構であった。試験体正面の軸組に、7.5mm厚ラワン合板をN50釘150mm間隔で釘打ちし、加力構面とした。試験体背面には耐力壁を設けず加力構面と直交する構面および2階床面、天井面に直径16mmの丸鋼ブレースを設置した。加力構面1階の柱脚部両側および1階の柱頭部および2階の柱脚部の片面にホールドダウン金物(HDB15)を設置した。加力構面1,2層にそれぞれに窓型、ドア型、スリット型の開口を有する5種類の試験体を用意した。加力構面1,2階の桁端部にアクチュエータを緊結し、コンピュータ・オンラインシステムによる仮動的水平力を加えた。実験に用いた地震波は、1940 El Centro NS波で、最大加速度が400galとなるように基準化した。各試験体とも1,2階にそれぞれ2.5tの慣性質量を仮定した。実験より得られた1,2層の応答変位を質点モデルならびに有限要素法を用いたモデルによる時刻歴地震応答解析結果と比較した。2質点モデルによる1層部分の解析値は実験値とよく一致したが、2層部分の解析値は実験値と比べて応答変位を過小評価する傾向にあることがわかった。これは、質点モデルでは1,2層の接合部における変形が考慮されていないためと考えられ、木造構面の地震時挙動を正確に推定するためには、有限要素法モデルなど接合部のすべりを考慮した精緻なモデルが必要であることがわかった。
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