研究概要 |
平成14年度には,スギ,ヒノキ,ベイマツ材を用い,これら材に各種前処理,すなわち,熱水抽出処理,横圧縮処理,熱水抽出・横圧縮処理を施し,細胞内腔表面のむれの状態の変化,ならびに液体の有効通路の剥離破壊による新生程度の変化に加えた材を用い,仮道管中への液体移動の様子について検討した。また,針葉樹仮道管内腔径,壁孔孔口径と同じ程度の大きさのガラス毛管径を作製して,木材細胞中での液体移動様式とガラス毛管径中での移動様式の違いなどを検討した。その結果,易浸透性のヒノキ材については浸せきぬれに先行して拡張ぬれが仮道管中で起こって液体浸透が行われている従来に明らかにされていない知見を明確にした。また,各種前処理木材の観察結果から,壁孔の閉鎖,仮道管内腔界面の物理化学的性質,細胞内腔の形態的相違が液体浸透にはたす役割などをかなり詳細に検討できた。また平成14年から15年にかけて減圧下の仮道管中の液体移動様式の観察法を確立し,仮道管相互の液体浸透に影響する因子として減圧度の増加による気泡の発生や,小さい通路での液体の停滞,進行様式などをかなり具体的に観察でき,それが前処理によって変化する様子を系統的に明らかにできた。また15年度には,これまでまったく明らかになっていない細胞中での液体移動速度について検討し,減圧度0〜30kg/cm^2の範囲で液体の浸透長の増加は√t時間に比例すること,速度係数は減圧度10kg/cm^2と20kg/cm^2範囲で急激に変化することを見出した。
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