研究概要 |
京都府舞鶴市の京都大学付属水産実験所に約100m^2のモデル実験区を構築した。事前の調査で,この海浜が粘土と牡蛎殻からできており,場所により透水性にむらがあること,もともと油分解細菌群集が多数存在することが明らかになっていたため,本研究では実験の度に比較的清浄な若狭湾に面する海水浴場(和田浜)の砂と入れ換えることにした。実際の油汚染でも社会的・経済的に問題になるのはこのような環境であろうと考えたからである。 実験は2001年から2003年にかけて4回行った。市販の海砂を海水と混和した中東産原油(人工漂着油)とともに撹拌し,汚染砂試料とした。これを実験区の観測井戸に,干潮浅と満潮浅の中間に位置するよう設置した。経時的に汚染砂を採取し,残存する油成分を解析した。同時に,ケロシンを基質とした培地で油分解脱窒細菌数をMPN計数したほかPCR-DGGE法で細菌集団の種組成の変化を解析した。また共同研究者である株式会社ネオスが新たに開発した栄養素型油処理剤Z18(特開2001-87754)を汚染砂に様々な濃度や形状で散布し,油分解促進効果を調べた。 その結果,Z18添加区では14日目までの油分解脱窒細菌の増加が非添加区に較べて早く,また油の生分解も促進されたことがわかった。またZ18の形状(液体,粉体および粒体)や添加量を検討し,長期にわたって細菌集団に窒素を供給し続ける応用法を開発した。16S rDNA遺伝子を標的にしたPCR-DGGE法によって油の生分解過程における細菌集団の変化やZ18電化による影響を評価したところ,油汚染によって細菌の種組成は劇的に変わるがそこにZ18を添加してもそれほど違いは見られなかった。このことから,Z18は現場で卓越する油分解細菌個々の活性を増大させている事が明らかになった。また分離した油分解脱窒細菌からはアルカン分解遺伝の中の3型(ALK-3)が検出された。
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