研究概要 |
最初に,昨年度構築したフグ肝組織切片を用いるin vitroによる培養モデルを改善した。培地をEagle's MEM培地からLeibovitz's L-15培地に替え,これに200mM NaCl,20mM HEPES,非働化した新生仔ウシ血清を加え,20℃で培養した。なお,組織の生死はalamarBlue assayで判定することとした。本条件下でフグ肝組織切片は少なくとも培養後6日間は生存していることが確認できた。改善した培地にテトロドトキシン(TTX)(45μg/ml)を添加して,フグ肝組織切片の毒量を測定したところ,切片中のTTX濃度は培養時間が長くなるにつれ増加する傾向を示し,培養48時間後には約70μgTTX/gになった。この値は昨年度MEM培地で培養したときの毒量(約15μgTTX/g)に比べて数倍高く,これは組織がより活発に活動しているためと考えられた。フグ肝がTTXを取込む特別な機構として,トランスポーターを想定した。トランスポーターの阻害剤をTTXとともに培地に添加して,阻害剤未添加の場合に比べ,TTX蓄積量が有意に減少するか調べた。その結果,p-アミノ馬尿酸およびカルニチン添加区で48時間後のTTX量は30〜40μgTTX/gと未添加区(約70μgTTX/g)に対して有意に低く,TTX蓄積への有機イオン輸送系トランスポーターの関与が示唆された。そこで本トランスポーターを得るため,まず,その検出法を検討した。市販の抗TTXモノクローナル抗体の利用を試みたが,モノクローナル抗体の検出感度,精度およびTTX-タンパク質複合体の検出などに問題があり,今後TTX輸送にかかわるトランスポーターを単離精製し解析するには,適切な検出法をまず検討しなければならないことがわかった。
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