研究概要 |
近年の農業政策では遊休農地の活用策が重要視されている一方,都市住民を中心に市民農園等への需要は益々高まりつつあるという認識から,本研究では遊休農地を農園として利用する際に考慮すべき条件と農園利用の有効性を明らかにすることを目的とした。 まず遊休農地の農園利用事例に対するアンケートによると,取組みのきっかけには地域差があるものの,どの地域でも都市住民が農業への理解を深める点に期待していることが明らかになった。一方,遊休農地を農園として利用する際に考慮すべき点として,農地の規模や基盤整備の有無,立地条件といった農地の特徴の他,次の点が示唆された。すなわち(1)運営主体は市町村等の公的機関が多いが,運営側の負担が重く利用者の自主的な運営を望んでいること,(2)農園施設の充実や利用者間のコミュニケーションの有無が取組みの継続性を左右することである。 次に兵庫県内の小学校を対象に学校農園の実施状況をアンケートから把握した。学外の農地を利用している実施校の割合は約40%で,農地面積は500m^2未満が大半を占めている。農園に対する評価は高いが,特に都市化地域では農地の確保が難しいことが問題点となっている。一方,農村地域の小学校を対象とした事例調査から,学校農園が地域を巻き込んだ取組みへ発展している波及効果が確認できた。これは学校農園が地域活性化の起爆剤になり得ることを示唆しており,運営を支える農家の負担を軽減する仕組み作りが必要である。 さらにバイオマスエネルギー生産を主目的とした菜の花栽培による農地利用の概要を整理するとともに,兵庫県五色町の取組みに着目し,そのプロセスとシステムの有効性を検証した。その結果(1)地域づくりの中で水田を食料生産以外に利用したことや,菜の花栽培という労働粗放的な農地管理によって,農地管理への多様な主体の参加と多様な資金の活用が実現されていること,(2)地域づくりが多目的化し,結果的に水田利用目的も多様化するプロセスにより,地域づくりの過程で新たな水田の多面的役割が開発・強化されていること,の2点が確認できた。
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