研究概要 |
平野部に位置するため池システムの流出抑制効果について計量的に評価し,流出抑制を行いうるためのため池の運用計画について検討することを目的とした. 対象流域として,清水川(普通河川,土器川水系)を選定した.同流域には計14個のため池群を有している.ため池システムによる流出抑制効果を計量的に評価するために,以下の計算ケースを設定して流出計算を行った. ・既存のため池システムが保持され,今後も現行の運用どおりに行われるとした場合(Case A). ・既存のため池システムが,全く消失すると仮定した場合(Case B). ・既存のため池システムが保持されるが,可能な限り流出抑制を行いうるように,ため池システムの運用を改変しうると仮定した場合(Case C). 2005年8月の台風15号,10月の台風23号による時間降雨データをもとに,特性曲線法により清水川の流出モデルを作成し,現況での流出パターンを再現した(Case A).Case Bとしては,ため池および関係水路が廃止され,ため池の貯水容量およびため池導水路・送水路の施設容量が消失することによって,出水が流域内に一時貯留されないもの仮定した.Case Bの流出パターンでは,台風15号によるピーク流量は9.1m^3/s,10月の台風23号によるピーク流量は約10.1m^3/sと算出された.同様に,Case Aの流出パターンでは,台風15号によるピーク流量は4.2m^3/s,10月の台風23号ではピーク流量は5.4m^3/sと算出された. 以上より,本研究で計算対象とした降雨条件では,清水川流域内のため池システムが現行の水管理が維持されるならば,ピーク流量を4.7〜4.5m^3/s程度軽減でき,これは既存のため池システムが全く消失した場合の46%,53%の減少であった. また,Case Cのような流出抑制を強化するためには,配置・立地条件,貯水容量が大きく回転率が高いため池などを選定し,ため池の嵩上げ,洪水調整ゲートの設置などのハード整備のほか,洪水調整のための運用規則について整備する必要があることが指摘された.
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