研究概要 |
化学肥料には,土壌を分散させ,微細土粒子の沈降を抑制する作用があることを明らかにした. 化学肥料の分散作用は土壌を微細粒子化させるため農地からの濁水の流出を加速させる.また,沈降抑制作用は沈砂池における濁水の沈降堆積を著しく低下させる.その結果,農地及び沈砂池からの微細土粒子の流出を促し,赤土による海域汚染を助長している. 化学肥料の分散作用は0.25mm以下の微細団粒に対し特に顕著であることが明らかになった.化学肥料の添加,無添加濁水における浮遊土砂の沈降現象の相違は目視によっても確認できる.任意経過時間における両濁水の同一水深の浮遊土砂量は化学肥料添加試料が有意に多く,化学肥料に沈降抑制作用があることが明白になった.また,分散及び沈降抑制作用は化学肥料の添加濃度によっても異なることも明らかになった.たとえば,国頭マージ濁水に化学肥料を添加した場合,少量の添加では土壌粒子は分散するが,ある程度増加すると凝集することが認められた.そのような現象は少量の化学肥料ではリン酸の特異吸着によりプラスの変異荷電がマイナスになり,全体のマイナス荷電が増加するため微細土粒子は分散すると推測される.しかし,さらに化学肥料を加えるとリン酸の特異吸着は飽和状態になりマイナス荷電の増加が止まり,さらなる化学肥料の添加はプラスイオンの増加をもたらし,次第にマイナス荷電と電気的に中和することとなる.この状態になると凝集が進むと考えられる. 自然土(pH4.5前後)と既畑土壌(pH8〜4)に化学肥料を添加し,土壌1:水溶液50の割合で作成した濁水を30分間往復振とうした結果,土壌に腐植含量が高く,バーミュライト-クロライト中間種鉱物が随伴すると分散しやすく,特にリン安施用は分散に及ぼす影響が強いことが明らかになった. 沖縄県に分布する国頭マージの流出濁水に化学肥料が混入すると凝集沈降が著しく抑制されることが明らかになった.この現象は,沈砂池の模型実験から得られた情報によれば沈砂池の規模および構造決定および堆砂効果の評価などに重要な影響を及ぼすことが明らかになった.
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