研究概要 |
1.石川県の河北潟周辺および手取川扇状地の農業用水路における調査結果から,水路内の水生生物の多様性や分布に大きな影響を与えているのは,流速とそれに関連する要因(水温や堆積量)であることが示唆された.また,別の小水路の調査から,底生動物の種多様性は流速の多様性と相関があることが示唆されている.これらのことから,農業用水路における生物多様性を維持するためには,水路内の流速の多様性を高めることや,淡水魚類の移動の障害となる落差工の改善が重要であることが明らかになった。 2.滋賀県水口町東池の栄養塩類の物質収支について検討を行なった結果,流入水中の窒素の7.5%とリンの50%が池に蓄積され,池に蓄積されるリンの70%は植物プランクトンによって固定されていることが明らかになった. 3.愛知県の大江排水路では,水路に500m間隔で設置した魚溜り(深さ50cm,長さ20mのプール)の有効性について調査を行った.その結果,魚溜りは非灌漑期には魚類の生息場所として一定の効果はあったが,魚溜り間の移動は小型魚類にとって容易でないこと,灌漑期には魚溜り内の流速も決して小さくないことなどから,魚溜り間の魚巣ブロックの設置や植生の保全などが望まれた. 4.岐阜大学構内の鶴ヶ池において,プランクトンと水質について調査を実施した.この調査結果に基づき,セルオートマトン法を用いたプランクトンの動態モデルを構築し,本法によるプランクトンの動態予測の可能性を示唆した.
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