研究概要 |
1.冬季温暖化による花芽異常の発生限界条件の解明 1)ブラジルにおける現地調査:南伯では低温遭遇時間が少ない園ほど甚大な被害が発生し,品種,栽培,気象,標高や地形条件との関係を解析した。低温不足を補う対応技術としての休眠打破剤の使用適期は必要低温時間の5〜7割経過時であり,我が国での再現試験時に花芽異常発生防止処理が有効になる生育ステージに一致した。 2)花芽異常の再現試験:野外で不十分な低温時間を与えた「幸水」,「豊水」幼木を用いて,花芽異常の再現と高温ショックを利用した抑止技術の検討を行った。自発休眠覚醒に必要な低温要求性の品種間差が花芽異常の発生程度に大きく影響し,かつ抑止効果の高くなる時期にも関係していた。 3)開花など生態情報データベースの構築と温暖化影響の解析:全国規模での約40年間の落葉果樹の開花や収穫日に関する資料を解析することにより,地域性や樹種・品種毎の特徴及び都市化の影響評価への利用法を明らかにし,収集整理を行った生態資料のデータベース化に取り組み,今後もデータの拡充・更新を継続する。開花から幼果の期間の温度経過が,「幸水」などの早生と「二十世紀」や「新高」などの収穫時期に及ぼす影響が異なり,果実の生育期間のモデル化には冬季の低温に加えて,盛夏期の高温の影響評価が重要であると推定した。 2.冬季の低温量不足に対応した制御技術の開発 水の気化熱を利用した冷却法と放射制御資材を組み合わせて積極的に樹体温の低下を図り,環境負荷が少なく,かつ省エネルギーである休眠開花の制御技術を開発した。気化熱+多機能資材の組み合わせに加え,高温ショック処理による花芽異常発生防止効果が検証でき,さらに実用的な制御法の開発を進めている。
|