研究概要 |
反芻家畜の消化器官組織における酸素消費量と窒素化合物の正味流量の面から,放牧家畜におけるエネルギー摂取量の推定と窒素(N)代謝を解明することを目的として,2年間に亘って3つの試験を行った。供試動物として腸間膜動静脈,肝門脈,肝静脈にカテーテルの装着手術を施した去勢羊を用い,試験1,2では舎飼い下で飼料を定量給与し,試験3では放牧下で自由採食させた。 1.粗飼料と濃厚飼料比7:3の飼料を維持(M)エネルギー要求量の0.5〜1.75Mまで給与させた場合,(1)個体レベルでの可消化なNとエネルギー摂取量およびN蓄積量は直線的に増加した。(2)消化管からのアンモニアN吸収量は直線的に増加したのに対し,αアミノN吸収量は二次曲線的に増加し,0.5M時に正味吸収量はゼロとなった。 2.粗飼料1Mに大麦を0〜1Mまで補給すると,(1)個体レベルでの可消化エネルギーとN摂取量は直線的に増加したが,N蓄積は二次曲線的反応を示した。(2)αアミノNの消化管吸収と肝臓取込み量は直線的に増加したが,総内臓組織からの放出量は大麦補給に対する明瞭な反応を示さなかった。(3)消化管への尿素N移行は直線的に増加したが,アンモニア吸収と肝臓尿素合成は大麦補給の影響を受けなかった。 3.5〜6月に2回放牧試験を行った結果,(1)牧草の生長段階と大麦補給の有無によって,消化器官組織におけるN化合物の正味流量は変動したが,総内臓組織からのαアミノNの放出量は大麦補給で増加し,かつ牧草の生育が進むと減少した。(2)試験1,2で得られた可消化エネルギー摂取量と消化管での酸素消費量の関係式から推定した放牧時のエネルギー摂取量は放牧後期で高く,大麦補給の影響は認められなかった。 以上の結果から,舎飼いと放牧では消化器官でのN代謝が大きく異なり,放牧時の穀類補給はエネルギー摂取量には影響しないが,末梢組織での利用可能アミノ酸量を高めることが示された。
|