研究課題
基盤研究(C)
両種肝蛭(Fasciola hepaticaおよびF.gigantica)に感受性を持つ新たな実験小動物を発見するため、ラット、スナネズミ、キヌゲネズミにメタセルカリア2〜10個を経口投与し、感染動物の健康状態・死亡の有無等を観察しながら感染後2〜3ヶ月で殺処分し、肝臓・胆管内の虫体の有無、感染率、肝臓病変の程度、さらに回収虫体の圧扁固定・染色標本を作製して虫体の発育状態を観察した。その結果、F.hepaticaはこれらの3種の実験動物に感染したが、F.giganticaの感染性は殆ど認められなかったことから、ラット、スナネズミおよびキヌゲネズミは両種肝蛭の共通の実験的終宿主とはなり得ないことが明らかとなった。両性生殖型のFasciola hepatica (Fh)と単為生殖型2倍体(2n)または3倍体(3n)との混合感染を行い、そのF1を細胞遺伝学的に解析して両者の種としての独立性を検討した。1.キヌゲネズミにFhと2nのメタセルカリア(Mc)をそれぞれ1個ずつ投与し成虫を得た。回収した2n虫体から作出したF1成虫はFhと2nの雑種(異質3倍体)であったことから、EF.hepaticaと単為生殖型2倍体は別種であると考えられた。2.ラットにFhと3nのMcをそれぞれ10個づつ投与し成虫20虫体を回収した。3nであることが確認された虫体の第1卵母細胞を観察し、Fhの精子が侵入(受精)している虫体から虫卵を回収し、培養してミラシジウムを得た。それを貝に感染させて得たMcをラットに投与してF1成虫を回収した。染色体分析からF1は2n=40の4倍体であることが確認された。これらには10個の3価染色体と10個の1価染色体が観察され精子形成は著しく異常であった。以上から、F.hepaticaと単為生殖型3倍体は別種であり、今回作出した4倍体は1代雑種であると考えられた。
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