研究概要 |
植物が生産する有機化合物は,5万種あるいは10万種以上とも言われる.このように多様な植物代謝産物が生産される背景には,高等植物の種多様性と,それらの多様な種において独自に進化した遺伝子(機能)の多様性があることは言うまでもない.そして,植物物質生産機能に関与する遺伝子の中で最も多様性に富むのが,シトクロムP450(P450)遺伝子ファミリーである.そこでP450とその電子伝達体遺伝子変異に起因する「代謝産物プロファイル変化」を「表現型の変化」として把握し,電子伝達体が関与する代謝機能を同定すること,さらに代謝産物プロファイル変化を基にして,電子伝達体と特定のセットを構成する末端P450酵素遺伝子を同定することを目的にしてFT-ICR-MS, GC-MS, LC-MSの組合せによる代謝産物の質量分析を基礎として研究を行った.まず,植物ミトコンドリア電子伝達鎖を構成するシロイヌナズナ遺伝子(AtMFDRおよびAtMFDX)を新規に同定することに成功し,さらにその分子生物学的,細胞生物学的,生化学的な研究を行った.研究成果は14回の口頭発表(P450国際学会(UCLA)招待講演,日本農芸化学会シンポジウム講演を含む)を行い,二編の専門国際誌に掲載された.
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