研究概要 |
組織幹細胞マーカー分子同定の重要性は再生医学,がん研究にとって想像に難くない.しかし,現在進められているマーカー分子の解析は,組織細胞の場合でも,血液細胞の例にならったFACS解析が主流であり,培養というバイアスを経た初代培養細胞等を用いてphenotypeの解析が行われている.一方,申請者は組織内の増殖細胞と分化細胞の局在を明らかにして,食道上皮幹細胞の存在領域を特定し,その領域の細胞集団に対するモノクローナル抗体を作製、解析することで,幹細胞を同定しようと試みている. 本研究では,食道上皮細胞に対するモノクローナル抗体F4を作製し,幹細胞のcandidateのphenotypeがS100A6+,S100A12-,S100P-,H10+,F4-であることを明らかにした、H10抗体は食道上皮の乳頭間領域の基底細胞を認識する.また,F4抗体は上皮細胞の分化過程のごく初期から発現される分子を認識していると予想された.我々の手法は非効率ではあるが,直接的に上皮幹細胞の特性を理解することができる有効な手段といえる. 一方,ニワトリ胚漿尿膜移植法により,表皮と肝の再構成系の確立を目指した.ラット胎児背側皮膚から採取した幼若上皮,または生後3-4wksのラット肝を2mm大のブッロクに細切し,ニワトリ胚の漿尿膜上に移植した.結果,漿尿膜上に毛胞形成を伴う表皮を作製することに成功した。また,新生血管周囲に房状に増生する肝細胞群も認めた.体外での組織再構成の可能性が示唆されたともに、その基盤として血管形成がきわめて重要であると認識された.
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