研究概要 |
本研究の目的は,胎生期の造血機能から消化腺へと急激に機能転換する生後早期肝臓を対象として,組織構成の変化,細胞組成の変化を細胞死の観点から明らかにすることである. 初年度は肝細胞を対象として観察した.肝細胞の細胞死は出生後増え,生後4ないし5日をピークとして減少する.肝細胞は小型化して細胞死に陥り,超微形態レベルで細胞質に形態変化が初発するタイプIと核に初発するタイプIIに区別できる.タイプIは小胞体の変化を初発とする細胞質型のプログラム細胞死であり,タイプIIは核形態の変化を初発とする古典的なアポトーシスであり,タイプIIにくらべタイプIの頻度が高い. 二年度はマクロファージを中心に観察した.ラット抗マウスマクロファージモノクローナル抗体F4/80免疫染色と鉄染色による光顕観察ならびに電子顕微鏡観察を行った.肝臓単位面積あたりのF4/80陽性細胞数は肝臓形成初期から生後早期まで急速に増加するが,生後4日と生後13日との間で有意に減少した.F4/80陽性細胞は胎生11日からすでに肝臓内に少数存在し,原始類洞腔でスカベンジャーマクロファージとして大小様々な細胞断片を取り込み,細胞質には鉄陽性封入体が認められた.肝臓造血最盛期にF4/80陽性細胞は造血巣内の赤芽球島中心マクロファージとなり,造血退縮期の胎生19日で,F4/80陽性細胞は造血巣内に存在するほか,造血細胞と離れ肝細胞間に孤立性に分布する.孤立性のF4/80陽性細胞の多くは鉄反応陽性を示したが,ほかに鉄陰性で小型球形の単核細胞が認められた.これは高い核・細胞質比を持つ.新生子期は肝造血の退縮に伴って肝細胞以外でマクロファージにも著しい変化がみられ,赤芽球島中心マクロファージも一部は新生子期の肝臓内で細胞死に陥り,鉄反応陰性の小型単核細胞は肝常在性マクロファージの前駆細胞とみなされる.
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