研究課題
基盤研究(C)
卵巣において、マクロファージは卵胞内にいかに分布し、そして卵胞の発育や閉鎖に際してその果粒層細胞の増殖や死にいかに関わっているのかを明らかにするために、モルモットおよびヒトの卵巣を用いて、光顕(H-E染色・免疫組織化学)および透過電顕によって検索した。1.モルモットでは、果粒層細胞に広範にアポトーシスの認められる閉鎖卵胞のみならず、発育中の卵胞内にもマクロファージが出現した。発育中の卵胞においては、マクロファージはその果粒層細胞の増殖にも関与している可能性が示唆された。2.ヒトでは、閉鎖したグラーフ卵胞内においてマクロファージが現れて、おおくの死滅した果粒層細胞の処理に与った。さきにわれわれが報告したモルモットにおけると同様の現象が、ヒトにおいても展開されていた。3.特にヒトの卵巣において、比較的大きなグラーフ卵胞の果粒層細胞間には、頻度は稀ではあったが毛細血管が認められた。一般に血管支配はない、とされている卵胞果粒層における血管新生を示唆する所見であった。以上より、卵胞内という微小環境においてマクロファージは、閉鎖に陥った卵胞ではその死滅した果粒層細胞の処理にあたる。一方、発育中の卵胞内にあってはサイトカインを傍分泌するなどにより、果粒層細胞の増殖を促し卵胞の発育にも一役を担っている可能性が示唆される。マクロファージと果粒層細胞との両者は相呼応して、卵胞の発育や閉鎖の過程と密接な関わりを有することが考えられた。また、いわば「上皮の環境」ともいえる卵胞内へと単球/マクロファージが侵入する機序については未だ不明であるが、ひとつの可能性として、今回われわれが観察したような卵胞膜から果粒層にまで伸びだした毛細血管の壁を通して卵胞内へと遊出する、との新たな仮説も考えられ今後の課題である。
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Anatomical Science International 79, Suppl.
ページ: 260-260
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解剖学雑誌 77
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