研究概要 |
生理的状態におけるNa^+-Ca^<2+>交換の活性制御メカニズムを研究する目的で、モルモット心室筋細胞から剥離したインサイドアウトパッチ(マクロパッチ)で、Na^+-Ca^<2+>交換電流(I_<NaCa>)を記録した。ATPまたはPI(4,5)P_2を細胞質側から与えるとI_<NaCa>は増強された。PI特異的phospholipaseCでパッチ膜を処理し、PIからPI(4,5)P_2への反応を抑制すると、ATPによるI_<NaCa>増強効果が抑制された。このことは、ATP効果の大部分がPIからPI(4,5)P_2を生成する反応によることを示唆する。一方で、チロシンフォスファターゼ阻害剤(vanadate、bpV(phen))はI_<NaCa>を増強した。これらの実験結果から、ATPのI_<NaCa>増強作用の一部にはPI(4,5)P_2産生を介さず、蛋白質リン酸化(おそらくチロシンリン酸化)を介する反応があることが示唆された。 Na^+-Ca^<2+>交換サブタイプの一つNCX3の活性制御メカニズムを調べる目的で、アフリカツメガエル卵母細胞にNCX3蛋白を発現させ、インサイドアウトジャイアントパッチ法を用いてI_<NaCa>を記録した。NCX3には細胞質側Ca^<2+>で活性化される機構のみならず、不活性化する機構の両者が存在することが明らかになった。 Na^+-Ca^<2+>交換はPKAにより活性化されるとの報告を、モルモット心室筋細胞において検証した。その結果、イソプロテレノールによるβ受容体刺激ではI_<NaCa>は活性化されなかった。これまでの報告の多くは、I_<NaCa>と似た電流特性を示すcAMP依存性クロール電流の存在を過小評価していたと考えられた。
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