研究概要 |
CS系マウスは,恒暗条件での行動のサーカディアンリズムにリズム・スプリッティングを示す.スプリッティングの生後発達との関連を明らかにすることを目的とし,仔マウスの行動および脳内時計遺伝子リズムの発達段階における変化を検討した.まず行働リズムでは,明暗下で,離乳直後から,暗期開始と終了に活動相をもつ明確なスプリッティングを示した.CS系仔マウスを,スプリッティングを示さないC57BL/6J系マウスと,生後すぐに母仔交換し,離乳後の行動リズムを観察したところ,C57BL/6J系の母に育てられたCS系仔マウスは,CS系母マウスに育てられた仔マウスと同様にスプリッティングを示した.時計遺伝子リズムでは,生後2週齢と3週齢の視交叉上核(SCN)およびそれ以外の脳部位におけるPer1/Per2発現リズムをin situ hybridizationにより調べ,成体の時計遺伝子リズムと比較した.まず成体のPer1/Per2発現リズムは,行動リズムが明確なスプリッティングを示しているにも関わらず,SCNでは単峰性であったが,SCN以外の脳部位では明確な2峰性を示した.仔マウスについては,現在データ解析中である. CSと比較するために,仔ラットのSCN時計遺伝子リズムの発達を検討した.仔ラットのPer1/Per2リズムは,生後1週齢で母ラットにより影響を受けること,さらに,生後1週齢の仔のPer1/Per2リズムが,母ラットからの隔離によりリセットされることがわかった. 体内時計関連覚醒物質である脳内ヒスタミンのリズム発達における役割を検討する目的から,ヒスタミン合成酵素欠損マウスの行動および時計遺伝子リズムをまず成体で調べた.成体のHDC欠損マウスは,野生型に比べ,行動リズムではフリーランリズムが延長すること,時計遺伝子リズムではSCN以外の脳部位でリズムが消失することがわかった.このことから,ヒスタミンが体内時計機構において重要な役割をもつことが示唆された.今後,ヒスタミンの体内時計における役割の生後発達による変化を調べる.
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