研究概要 |
大腸菌タンパク質-リポ酸リガーゼ(LplA)はリポ酸をlipoyl-AMPに活性化する反応と,そのリポイル部分をタンパク質に転移する反応を触媒して,2段階的にリポ酸依存性タンパク質のリポイル化を行う酵素である.組み換えLplAとそのメチオニンをセレノメチオニンに置換したLplA(Se-LplA)を大腸菌中で発現し,精製後それらのタンパク質の結晶化を行った.X線回折の測定はSpring-8,Beamline BL44XUにおいて行い,位相はSAD法によって解いた.LplAの構造は大きなN-terminal domainと小さなC-terminal domainの2つのドメインより構成されており,両ドメインの間に大きなsubstrate-binging pocketを形成する.基質であるリポ酸はそのカルボキシル基がタンパク質側のN-terminal domainにあるヒスチジン残基と水素結合によって,また炭化水素鎖部分は疎水結合によってタンパク質と相互作用していることが明らかになった.一方,ATPはN-terminal domainとC-terminal domainの両方の部位で水素結合によって相互作用していることが明らかになった.ATPのα-Pとリポ酸のカルボキシル基のO原子との距離は,O原子がATPのα-Pをnucleophilic attackして反応が開始するのに十分近い距離にあることが示された.LplAの哺乳動物homologueであるリポ酸転移酵素はLplAとアミノ酸配列上は30%以上の相同性があるにも拘らず上記の第2の反応のみを触媒する.LplA中のATPが結合するC-terminal domain部位に相当するリポ酸転移酵素のアミノ酸配列には多くのスキップがあり,そのことが,リポ酸転移酵素が第1の反応を触媒できない原因ではないかと推定された.
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