研究概要 |
薬剤結合部位の同定の目的で新規のMRP1阻害物質AG-Aの光親和性標識化合物azidoAG-Aがグルタチオン(GSH)存在下にC末端側に結合すること、その結合部位が薬剤結合部位と重なっていることをすでに報告した。 さらに詳細な薬剤結合部位の解析のために、1222番目のアミノ酸の後にHAのタグを付加したMRP1をazidoAG-Aで光標識後に抗HA抗体で免疫沈降し、さらにトリプシンで分解した。この時得られた標識タンパク質の最小断片は16KDaであった。他の結果から低濃度のトリプシン切断部位が膜貫通部分(TM)17番目とC末のArP結合部位(NBD)NBD2との間にあるので、16KDaの断片はTM15,16の間の細胞内部分とTM17とNBD2との間の由来であり、この部分にazidoAG-Aが結合していると考えられ、TM16,17がその結合に重要であることがわかった。 このTM16,17周辺部の1202,1222,1249番目のアルギニンを疎水的なアミノ酸に置換した変異体を作成して,MRP1の機能を解析した。1202Rの変異体はazidoAG-Aの結合性を消失したが輸送機能は保たれていた、1222Rの変異体は機能に変化がなく、1249Rの変異体はazidoAG-Aの結合性も、LTC_4の輸送機能は消失した。これらのことから1202RはazidoAG-Aの光親和性結合に直接関与するが、輸送機能には関連しない部分で、1249Rは薬剤の認識とその輸送に必須な部分と考えられた。 さらにN末C末のNBD内の保存された配列Walker Aとsignature sequenceの点変異体MRP1を作成して、LTC_4の輸送機能とazidoATPを用いて検討した結果。一方のNBDのsignature sequenceと別のNBDが相互に作用しあって、ATPと結合していることを示唆する結果を得た。
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