研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)の白血病転化にいたる経路を臨床病理学的に明らかにし、以下の新たな知見を得た。 1)骨髄組織標本を用いた病理組織学的解析に必要な赤芽球の検索のため、胎児型ヘモグロピン(HbF)特異性の高い合成ペプチドを作製し、特異抗体の樹立に成功した(Int J Hematol 74:277-280,2001)。 2)鑑別の困難な、再生不良性貧血と低形成MDSを、赤芽球のHbF発現と、p53陽性所見とあわせ、鑑別診断が可能であることを明らかにした(Int J Hematol75:257-260,2002)。 3)髄外造血病変で、HbFを発現する赤芽球の出現が特徴とされてきたが、HbFが発現する赤芽球は、一種のstress erythropoiesisに伴うことを明らかにした(Haematologica 87:323-325,2002)。 4)MDS症例における赤芽球のHbF発現、p53発現を検討した。MDSでは有意に赤芽球のHbF発現が認められ、p53+所見も有意に観察された(Leukemia 16:1478-1483,2002)。 5)MDSにおける赤芽球のHbF発現は、stress erythropoiesisと異なり、赤血球のHbF発現に反映しないことから、無効造血が貧血の原因であることを明らかにし、apoptosisの高頻度の関与を指摘した(Leukemia 16:1478-1483,2002)。 6)MDSにおける無効造血と、赤芽球のHbF発現に、iNOS産生の亢進が関与していることを明らかにした(Ann Hematol 81:548-550,2002) 後方視的検討により、MDSの中で白血病化のリスクが高く、治療抵抗性である7番染色体異常を,有する群を検討し、その初期病理像から、臨床的病態を推定できるパラメータの抽出、悪性化の機構の解明を明らかにした。
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