研究概要 |
平成14年度はCD123をマーカーとして,ヒト扁桃組織などの2次リンパ組織におけるプラズマ細胞様樹状細胞(PDC)の分布を検討したが,PDCはin vitroでIDCに相当する成熟樹状細胞(DC)への分化を誘導しうるにも拘わらず,リンパ節T細胞領域ではリンパ球様の形態を示し,高内皮静脈周囲に集積しており,IDCとは全く移行を示さないという矛盾する結果が得られた。即ち,PDCはリンパ球様で,CD4,CD40,CD45RA, CD68陽性であるが,IDCと以降を示す細胞は皆無であった。これはin vivoにおいてはPDCは独自の役割をもっており,IDCへの分化が抑制されていると解釈された。平成15年度は,従来一括りにされていたIDCが多様性ある細胞集団であるのに,それが分類されていないことを鑑み,まずIDCを複数のSubsetに分類し直し,それぞれの疾患による分布の違い,それぞれの細胞起源などを明らかにし,その上でPDCとの関係を明らかにすべく実験を行った。第一の成果はIDCをS100b蛋白とfascinの有無によって複数のsubsetに分類することに成功したことである。即ち,IDCは,(1)S100b+/fascin- IDC(IDC-1),(2)S100b+/fascin+ IDC(IDC-2),(3)S100b-/fascin+ IDC(IDC-3)の3つのサブセットに分かれること,更にIDC-3とS100b+IDCでは形態が異なること,培養するとS100b+IDCはアポトーシスを起こすのに対して,IDC-3は安定であることなどが判明した。第二の成果はそれぞれのIDCサブセットの出現頻度が疾患によて異なることの発見である。即ち,通常の非特異的リンパ節炎では(2)が最も多いタイプのIDCであるのに対して,結核性リンパ節炎,サルコイドーシス,および壊死性リンパ節炎(Kikuchi disease)では(3)が,皮膚病性リンパ節炎では(1)が最も多いタイプのIDCであった。特に壊死性リンパ節炎では(3)型IDCが多数出現するのに対して,(1)および(2)型のIDCはごく少数か,症例によっては殆ど出現しないことが判明した。これらの結果は(1)(2)(3)のIDCサブセットはそれぞれ個別の存在様式をもつ独立した細胞群であること,それ故それぞれ細胞起源が異なると推定された。そこで,末梢血中のDCに分化しうる細胞を検討したところ,DCに分化する細胞はプラスチック接着分画に存在し,CD14+/CD123-大型細胞と,CD14-/CD123+中型細胞の2種類が存在することが判明した。前者は通常のmonocyteであり,後者は血液中に存在するPDCと考えられた。両者とも非常に良く類似した性格を示し,PDCはリンパ球起源というよりmonocyteのsubpopulationと解釈するのが妥当と考えられた。前者はGM-CSFとIL-4によって,後者はIL-3とCD40LによってDCに分化しうるが,いずれもS100b-/fascin+であった。これらの結果は(3)型のIDCはmonocyteないしPDCに由来することを示唆している。そこで壊死性リンパ節炎のPDCの存在を検討してみると,夥しいPDCが(3)型のIDCと関連して分布することが明かとなった。即ち,PDCは(3)型IDCの前駆細胞であり,壊死性リンパ節炎成立に深く関与することが推定された。さらに(1)型IDCは皮膚ランゲルハンス細胞由来であること,(2)型IDCはS100陽性リンパ球由来である可能性が示唆される結果をも得た。
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