研究概要 |
1.十二指腸腫瘍の粘液抗原の形質発現 25例の十二指腸癌のpS2,HGM, SIMA, CD10,MUC2の発現では、de novo癌由来(9例)、腺腫由来(12例)で小腸型のSIMAがそれぞれ6/9,8/12、ブルンナー腺由来(4例)で胃型のHGMが4/4の高頻度の傾向を示した。 2.大腸腫瘍の粘液抗原の形質発現 (1)通常の腺腫並びにsm癌において胃型の形質発現は低く、SIMAは腺腫と比較し癌での発現率が統計的に有意に高かった。(2)臨床病理学的には各種粘液抗原の中でSIMAのみがsm浸潤実測値、静脈侵襲等の生物学的悪生度に相関していた。(3)正常粘膜から化生変化で発生したHPまたは鋸歯状腺腫(SA)は、胃型の形質を獲得し、癌化により腸型の形質に分化していた。 3.膵腫瘍における粘液抗原の形質発現 (1)過形成病変、IPMA, IPMCにおける粘液抗原の発現;胃型の形質発現(pS2,HGM, MUC5AC, MUC6)は、過形成、腺腫、さらに腺癌で有意な発現があり、小腸マーカーSIMAは癌で特異的な発現を示した。 (2)浸潤膵管癌における粘液抗原の発現;浸潤膵管癌では、MUC1,SIMAの腫瘍間質陽性率は、37.0%,26.1%を示しMUC1/SIMAの間質発現を訴す症例が、両者とも陰性の症例に比較して有意に予後不良だった。 4.胆管の過形成病変、dysplasia、腺癌における粘液抗原の発現 過形成病変では、pS2,MUC5AC, MUC6,SIMAがわずかに発現し、dysplasiaでは、発現はなかった。腺癌では、pS2,HGM, MUC5AC, SIMAは、それぞれ65.2%,65.2%,86.4%,65.2%認められ、有意な発現を示した。臨床病理学的にHGMの発現がある症例は、血管浸潤の頻度、深達度が有意に高かった。
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