研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の癌化における間質細胞の遺伝子不安定性・変異の関与を明らかにすべく、検索を行い、以下の結論を得た。1、その対照としてmicrodissection法によって特発性大腸癌病変の上皮細胞と間質細胞とを分離採取し、DNA抽出・PCR-SSCP法によりmicrosatellite instability(MSI)を検索した。その結果、癌組織では上皮、間質細胞にMSIが高率に認められ、上皮細胞では癌細胞の分化、Dukes stageの進行に相関していたが、間質細胞では高分化腺癌、Dukes Aに高く、逆の相関があり、特発性大腸癌発生において間質細胞の関与を含む新たなる発癌機構の存在が示唆された。2、UCに伴う腫瘍病変では、上皮細胞のMSIないしloss of heterozygosity(LOH)は再生上皮、異型病変、癌と徐々に上昇していたが、間質細胞では再生上皮の段階から既に高率(約50%)に認められた。従って、UCにおいては間質細胞の遺伝子不安定性が先行して、上皮細胞の制御不全となり上皮細胞の腫瘍化が生じる可能性が示された。さらに、17番及びその他の染色体上のマーカーにMSI, LOHが高率に出現した。以上から、(1)UCにおける腫瘍性病変では、聞質細胞の遺伝子不安定性が先行し、上皮細胞の癌化につよく連関している、(2)癌抑制遺伝子をコードしている3,7,9,13,17,18番染色体上のマーカーでMSI, LOHが生じやすいことが示され、炎症に伴う酸化的ストレスによるMSI, LOH出現に特異性があることが判明した。
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