研究課題
基盤研究(C)
神経芽腫におけるシュワン性間質の存在は、神経芽腫患者の予後に深い関連があり、神経芽腫に特徴的な自然消退とも関連があると考えられている。また、この神経芽腫に伴うシュワン性間質の起源には、腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞を取り囲む正常間質由来との説があり、いまだに結論に至っていない。本研究では、まずヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞が神経芽腫腫瘍内においてシュワン細胞に分化するかどうかを検討した。緑色蛍光タンパク質(EGFP)によりラベルされたヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞が、あらかじめ神経芽腫細胞を移植された非肥満性糖尿病/重症複合型免疫不全マウス(NOD/SCID)に移植された。そしてその形成された腫瘍が免疫染色あるいはウエスタンブロット法にて解析された。またヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞は神経芽腫細胞と接触あるいは非接触環境下で共培養された。そして、シュワン細胞の特異的分子(S100betaとEgr-2)の発現誘導を観察した。その結果、S100beta/Egr-2陽性シュワン性間質は、ヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞が移植された神経芽腫腫瘍内にのみ観察された。一方、ヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞が移植されていない腫瘍や神経芽腫細胞が移植されていない場合には、シュワン性間質は出現しなかった。また抗S100と抗EGFPによる二重染色から、シュワン性間質のS100陽性細胞はEGFP陽性であることが示された。一方、ヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞はユーイング肉腫や他の癌組織内ではシュワン性間質にはならなかった。これらの結果は、移植されたヒト骨髄間質細胞あるいは間葉系幹細胞が神経芽腫腫瘍内においてのみシュワン細胞に分化することを示した。共培養の実験からは、S100beta/Egr-2陽性細胞は、神経芽腫細胞で共培養された場合のみ出現したが、その際、接触培養下の方が、誘導能は強力であった。またこのシュワン性間質の誘導においては、TGFbetaの関与は明らかではなかった。これらの結果は、神経芽腫のシュワン性間質は非腫瘍性間質細胞に由来する可能性を示している。このように神経芽腫におけるシュワン性間質の生体内および試験管内での誘導に成功できたことから、この分子機構を詳細にすることで神経芽腫の自然消退のメカニズムに迫る可能性があると考えている。
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