研究概要 |
川崎病発症早期の動脈構築破綻に関与する諸因子を病理組織学的に検討するために、8川崎病急性期死亡症例の冠状動脈組織切片に対してHE、EvG、AM染色に加えて免疫組織化学的に好中球、リンパ球、マクロファージ、形質細胞を同定し、経時的変化を観察した。好中球は発症10病日死亡例の動脈壁に最も強い浸潤を認め、以降その数を減じていった。本例の冠状動脈には汎血管炎が生じていたが癌はみられなかった。一方、CD3、CD20陽性リンパ球ともに浸潤のピークは17病日死亡例であった。CD68陽性マクロファージのピークも17病日であったが、検索した全ての症例で著しい浸潤を伴っていた。既報告によれば川崎病冠状動脈には発症後9-10日で汎血管炎が生じ12日前後に瘤が完成する。今回の検索でも急性期死亡例の動脈病変内に浸潤していた細胞の主体はマクロファージであった。この点で川崎病動脈炎は他の多くの血管炎疾患で観察されるような好中球が前面に立つ炎症とは異なるが、動脈癌形成時期にほぼ一致したピークを示す好中球浸潤が確認され、マクロファージのみならず好中球から産生・放出される諸酵素が動脈構築を破壊し癌形成に関与している可能性がある。 次に、免疫グロブリン投与後の死亡症例と免疫グロブリン療法非施行例との間で組織像を比較した。免疫グロブリン投与症例でCD20+リンパ球の浸潤程度が軽度になる傾向を示したが形質細胞は両者間で明確な差異を見出せなかった。免疫グロブリン投与剖検例は数が少なく、今後継続して検討を進める必要がある。最後に、病原因子の検索として、Chlamydia pneumoniae. Enterovirus, Cytomegalovirus, Hepatitis B virus, Varicella-zoste rvirusを免疫組織化学法、ISH法を用いて検索したが、積極的に示唆しうる病原因子は指摘できなかった。 最後に、病原因子の検索として、Chlamydia pneumoniae.Enterovirus,Cytomegalovirus,Hepatitis B virus,Varicella-zoste rvirusを免疫組織化学法、ISH法を用いて検索したが、積極的に示唆しうる病原因子は指摘できなかった。
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