研究概要 |
本研究は、慢性腎不全や透析患者においてurea hydrogen peroxide(UHP)を介する糖酸化ストレスの亢進が心筋組織蛋白の糖酸化修飾を引き起こし、これが心不全発症に関与しているという仮説を証明する目的で遂行された。まず我々は、糖尿病、慢性腎不全、透析患者の剖検症例を用いて心、血管組織のコラーゲンやエラスチンの糖酸化ストレスと石灰化について検討した。慢性腎不全、透析患者のマトリックス蛋白質には糖酸化産物であるカルボキシメチルリジンとペントシジンが増加し、これら患者の心、血管組織における石灰化の亢進に密接に関連していることを明らかにした(Nephrol Dial Transpl 17:630,2002;18:1601 2003)。そこで、マトリックス蛋白やアルブミンをin vitroで修飾し、蛋白質の機能がどのように変化するか検討した。糖酸化修飾マトリックス蛋白(コラーゲン、エラスチン)のカルシュウム結合能は亢進し、糖酸化修飾アルブミンの抗酸化能は低下することを明らかにした(Heart Vessels 17:22,2002;J Vasc Res 40:567,2003)。第三に、腎不全患者剖検例と5/6腎摘慢性腎不全ラットの心筋組織のミオフィラメント蛋白の糖酸化修飾について検討したところ、いずれにおいても心筋ミオフィラメント蛋白のペントシジン含量は増加していた。さらに、心筋組織のUHP量も増加していた。そこで、尿素または透析患者血清濾液存在下で心筋組織をリボースと反応させると、ペントシジンとUHP量が尿素や透析患者血清濾液の濃度に依存して増加した。このことから、慢性腎不全患者では心筋ミオフィラメント蛋白がUHPを介して糖酸化修飾されている可能性が示唆された(Am Coll Cardiol 39:416B,2002;J Am Soc Nephrol, in print)。
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