研究概要 |
骨芽細胞は、1)骨髄造血系細胞の増殖に必要なM-CSFなど液性因子の供給、2)破骨細胞への最終分化に不可欠な破骨細胞分化因子(RANKL)の発現を介して破骨細胞形成を支持する。マウスならびにヒトRANKL遺伝子5'上流プロモータ領域を解析して、RANKL発現を介するvitamin D3の破骨細胞形成促進作用を明らかにした。マウスプロモータでは1箇所のVDRE(-940)が機能的に有効であるが、ヒトプロモータについては3箇所の候補配列(-1584)、(-1418)、(-1383)のうち、最上流の(-1584)が機能的VDREであることを明らかにした。マウスとヒトのプロモータ構造は類似性が高く、VDREを介する制御機構は種を超えてよく保存されていることが示された。 悪性腫瘍の溶骨性転移の機構をRANKL発現制御の観点から検討した、マウスおよびヒトRANKLに対する特異的なプローブを作成してin situ hybridization法を行い、病理解剖症例のPTHrP産生腫瘍の転移巣の組織標本にて骨芽細胞・骨髄間質細胞にRANKL mRNAを検出した。 PTHrPによるRANKL発現制御の検討も継続して行った。マウス及びヒトのRANKL遺伝子プロモータコンストラクトを用いたtransfection系に、PTHrP処理を行うとともにPKAのagonist, antagonist投与を行い転写活性に及ぼす効果を検討した。マウス及びヒトRANKL遺伝子プロモータにおけるcAMP応答配列(CRE)の存在に関しては、マウス、ヒト各々数力所の候補配列に着目してEMSA assayや変異導入実験を行い、機能的CREの存在を明らかにした。プロモータ活性の検討に加えて、H3,H4ヒストンに対する抗体を用いてのCHIP assayを行い、PTHrPもしくはPKA agonistの作用でクロマチン活性化が起こることを確認した。 以上の成果は、英文誌に報告した(BBRC2002,J Pathol 2002,J Cell Biochem 2003)。また、成果の一部は第91回92回日本病理学会総会、第20回21回日本骨代謝学会、第61回62回日本癌学会総会、第24回25回米国骨代謝学会議にて報告した。
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