研究概要 |
ギャップ結合は,隣接する細胞の細胞質を直接連絡するチャネル構造で,その中を通過する物質を介する細胞間コミュニケーションによって種々の細胞機能を制御している。近年ギャップ結合蛋白質コネキシン遺伝子の突然変異によって生じるヒト遺伝性疾患(ギャップ結合チャネル病)の存在が明らかにされてきた。しかし,どのような機序でギャップ結合の異常が病態を発生させるかは不明である。本研究では心臓で発現している主要ギャップ結合蛋白であるコネキシン43の130-137番目のアミノ酸を欠損させた変異コネキシンとenhanced green fluorescent protein(EGFP)との融合遺伝子を作成し内因性コネキシン43の機能をドミナントネガティブに阻害することによって細胞間コミュニケーションを抑制する新しいシステムの樹立に成功した。このシスチムを用いることにより,細胞におけるギャップ結合タンパク質の局在と同時に.細胞間コミュニケーションや細胞内カルシウムイオンの動態を可視化し解析することが可能となった。このドミナントネガティブ変異コネキシン遺伝子発現ベクターを初代培養ラット新生仔心筋細胞に導入することによって,変異コネキシンは,心筋細胞間の細胞間コミュニケーションを阻害するだけではなく,心筋細胞同士の細胞内カルシウムトランジェントの同調を高率に阻害することを明かにした。このことにより心臓におけるギャップ結合細胞間コミュニケーションの阻害が,不整脈や収縮不全などの心機能異常を起こす可能性が示唆された。
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