研究概要 |
本年度はV.vulnificus Tn5挿入変異弱毒化株である0204株での,トランスポゾン挿入領域の塩基配列を約10kbにわたり決定し,その結果を遺伝子データバンクを用いて相同する遺伝子の検索を行った.その結果,変異株のトランスポゾン挿入部位は,すでに全ゲノム解析が完成しているVibrio choleraeのUDP-galactose-4-epimerase遺伝子領域と相同性を示したまた同じく,2003年においてゲノム解析の一部が公表されたV.vulnificus YJ016株およびCMCP6株でも糖代謝に関与するnucleoside-diphosphate sugar epimeraseの遺伝子と相同性を示した.したがってトランスポゾンによって破壊された遺伝子はリポ多糖合成系で糖鎖の生合成の前駆体と考えられているヌクレオチド糖の合成に関与する遺伝子であることが判明した.また、手持ちのライブラリ全てについて0抗原関連遺伝子以外の、感染に関与する弱毒変異株を網羅的スクリーニングを行い署名Tag法でシグナルを失う株を数十株得た.現在これらについて病原性の消失を確認するとともにトランスポゾン挿入部位の解析を行っている.また,臨床分離株,環境分離株をパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いて病原関連遺伝子間のゲノムでの位置関係を明らかにすることを目的とし,制限酵素NotI切断染色体DNAをhemolysin/cytolysin(vvhA),phospholipase(vvl),protease(vvmp,vvp),capsular polysaccharide operon(CPS),vulnibactin uptake gene A(vuuA)などの既知の病原遺伝子ブローブでサザンハイブリダイゼイションを行った.その結果,vvmp,vvp,vuuAはいずれも同じ210kb断片にハイブリダイズしたところから,これらの病原遺伝子は染色体の特定の部位に集中して存在していることが示唆された.
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