研究概要 |
Yeast Two-Hybrid法によりmIL-12Rβ1に会合する分子の一つとして、近年細胞内情報伝達分子であることが明らかになってきている脂質メディエーターSphingosine-1-Phosphate(S1P)を生成する酵素Sphingosine Kinase2(Sphk2)を同定した。まず、293T細胞でそれぞれの分子に異なるタグをつけて一過性に発現させ、お互いが共沈してくることを確認した。さらに、293T細胞を用いてp3xGAS-Lucのリポーターアッセイを行ったところ、Sphk2はIL-12によるStat4のTranscriptional Activationを増強することがわかった。次に、Wild-TypeおよびDominant-Negative Sphk2をTh1細胞クローン(2D6)に発現させIL-12刺激に対する反応性を比較すると、Wild-Type Sphk2はIL-12刺激によるIFN-γ産生を増強しDominant-Negative Sphk2はそれを抑制したが、いずれも細胞増殖へは影響を与えなかった。さらに、レトロウイルスベクターを用いて活性化したプライマリーT細胞へ遺伝子導入しIL-12に対する反応性を比較すると、IFN-γ産生を有意に抑制したが細胞増殖へは有意な差が見られなかった。以上より、Sphk2がIL-12Rβ1の細胞内領域に会合し、IL-12シグナル伝達の正の調節に関与している可能性が示唆された。 組み換えIL1-27を作製し、ナイーブCD4+T細胞を固相化抗CD3抗体で刺激1日後、IL-27で10分間再刺激し細胞溶解液を各種JAK1,2,TYK2,STAT1-6のチロシンリン酸化抗体を用いてウエスタンブロットによりIL-27刺激でリン酸化されるJAK/STAT分子について調べた。その結果、JAK1,-2,TYK2,STAT1,-3,-5とSTAT2のリン酸化が見られた。そこで、次にSTAT1遺伝子欠損マウスを用いて検討したSTAT1遺伝子欠損マウス由来ナイーブCD4+T細胞のIL-27刺激による細胞増殖は、野生型マウス由来とほとんど変わらなかった。しかし、IL-27刺激によるT-betおよびIL-12Rβ2発現誘導や、IL-12と相乗的なIFN-γ産生もほとんど見られなかった。このSTAT1遺伝子欠損マウスでは、IL-27刺激によりSTAT1のチロシンリン酸化が見られないのみならず、STAT2,-5のチロシンリン酸化も見られなかったが、STAT3のチロシンリン酸化は野生型マウスと同様に見られた。以上より、IL-27のシグナル伝達において、STAT1は、T-betおよびIL-12Rβ2発現誘導に、STAT3は細胞増殖誘導に重要であることが示唆された。
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