研究概要 |
MRSAやMRC-NSは院内感染原因菌として認識されているが,近年市中の健常人にも保菌者がいることが確認されている.そこで今回の調査により,薬剤耐性ブドウ球菌がどの程度市中に広まっているかを一般健常人1036名を対象に調査した.その結果,鼻腔からメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSAまたはMRC-NS)が検出されたのは394名(38.0%)で,特に小学生以下の小児,過去6ヶ月以内に抗生物質の服用をしていた人,医療従事者とその家族からの検出率が高かった.薬剤師215名についてさらに詳細な検討を行ったところ,167名(77.7%)が保菌者であった.医療従事者以外の一般健常人では保菌率が25.6%であったことから,薬剤師についてさらにリスクを検討したところ,現在調剤業務に従事しているケースで検出率が高く,相対危険度は3.97(95%信頼区間3.67〜4.27)であった.また耐性菌保菌者では「過去3ヶ月間の抗生物質散剤・顆粒の平均調剤数」が約600と,非保菌者の10倍以上であった. 今回分離した耐性菌株のMIC(MPIPC)は,MRSAは全て,またMRC-NSでは約30%が64μg/mL以上で,マクロライド系,キノロン系薬剤とホスホマイシンに耐性を示すものが多かった.薬剤耐性遺伝子(mecA-mecR1-mecI)の存在についてPCRで検討したところ,MRSAではmecIのみ検出されない株が大部分であったが,MRC-NSではmecIとmecR1共に検出されない株が90%以上であった. 今後高齢者や易感染患者が市中で増加すると,薬剤耐性菌が様々な問題を起こすことが予測されることから,さらにその動向を監視すると共に,抗生物質の適正使用の推進,薬剤師の調剤環境に関する調査等を行うことも必要ではないかと考える.
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