研究概要 |
不動状態(寝たきり状態)や微小重力環境への暴露は著しい骨量減少を起こす。高齢化社会を迎え、寝たきり状態の患者は増えており、再び日常に復帰することは困難であり、著しい医療費・介護要員の増加をもたらす。その骨量減少メカニズムの解析は、その減少を阻止、予防することになり、緊急性は高い。この骨量減少機構は破骨細胞機能の充進と骨芽細胞機能の抑制即ちアンカップリングにより生ずると言われている。我々の予備的ベッドレスト実験では、その機構は存在しないことを見いだした。そこで20日間にわたり、排便のみストレッチャーで移動させる以外ベッド上安静を負荷するベッドレスト負荷を20代男性に行った。骨量の変化、骨代謝回転、末梢血単球のサイトカイン遺伝子発現、カルシウム調節ホルモンの推移などを検討した。その結果、カップリングした高代謝回転を示す群と骨細胞の活性化による骨細胞性骨吸収を起こす群〔骨減少量が多くハイリスク群といえる〕により骨量が減少していた。骨細胞性骨吸収現象は理論的には存在する可能性は指摘されてきたが、臨床的直接証明は今まではなかった。末梢血単球からは、骨吸収性サイトカインTNFα、IL-1,IL-6,GM-CSFなどの遺伝子発現が亢進(ベッドレスト負荷14日には約2.5倍の増加を見た)していた。更に血中イオン化Caに対するCa-sensing receptorの遺伝子発現も亢進していた。この結果不動状態の20日前後という短期間での骨量減少には従来より言われている破骨細胞、骨芽細胞機能のアンカップリング現象は出現せず、更に骨髄環境を反映している末梢血単球ではサイトカイン系の変化があり、これが骨量減少に関与する可能性が示唆される結果を得た。
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