研究概要 |
本研究の目的は,思春期・青年期の一般集団・臨床集団に,うつ状態判定質問票と摂食障害判定質問票を同時に実施し,両者の関連性を疫学的に検討し,その知見を用いて疾患判定のスクリーニング精度を上げ,学校や家庭におけるリスクグループの早期発見・早期介入に結びつけることである.本研究の対象は,群馬県下の一般中学生,高校生,大学生および児童思春期外来に通院する思春期患者であり,測定手段は米国精神医学協会の診断基準DSMに基づく自記式うつ状態判定用尺度DSD(27項目)と自記式摂食障害判定用尺度EAT-26である. 初年度に行われた予備調査では,一般公立中学生485名,一般私立大学生159名,あわせて644名よりデータを採取した.DSDにより測定されたうつ状態の症状と,EAT-26により測定された摂食障害の症状に関する各質問項目あるいは尺度得点が,どのように関連しているかを因子分析等を用いて解析した.この結果から,DSDに過食要因の6項目を付け加え,新たなうつ状態判定アルゴリズムを構成した. 次年度に行われた本調査では,一般群として中学生480名,高校生164名,大学生141名(計785名)からデータを採取し,臨床群として県内の精神病院の児童思春期外来に通院する13歳から21歳までの男女30名からデータを採取した.うつ状態の新しい判定基準の妥当性を検証するため,臨床群の一部に半構造的診断面接(修正SCID)を実施した.その結果,一致度は従来の基準に比べ新しい基準により若干の改善を見た.しかし,標本数が少ないこともあり,新基準の有効性の確定については今後,標本サイズの大きい一般群での調査実施を待って結論付けたい.また,臨床群,一般群とも,思春期・青年期におけるうつ状態の症状と食行動異常の各症状との間には,特に女子において強い関連性が見られた.臨床群において両者の関連性が顕著であったが,一般群においても学年が上がるにつれて臨床群に近づくことが示唆された.
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