研究概要 |
薬剤の有害事象をレセプト傷病名から検出するためめデータマイニング手法を考案した。 1)薬剤と傷病名との総組合せ(直積,デカルト積)を算出する。 2)ポアソン検定を用いて,偶然による同時出現したと考えられるものを対象から除外する 3)薬剤投与が傷病名の出現より先行している割合を算出し有意差検定を行う 1)はSQL言語により容易に得られ,2)は全ての組合せについてポアソン検定を行い組合せの出現数が期待値+1.96標準偏差を超えるものだけを対象とする。3)は,医科レセプトと調剤レセプトを個人単位でリンクし傷病名の診療開始日と,対象薬の調剤日の前後関係を二項検定により評価する。 日本医療データセンター(JMDC)社が健保組合と契約によりレセプトデータベースを保有していたのでこれを活用した。全組合せについて薬剤の調剤日が傷病名の診療開始日が先行している割合(先行率)を求め,薬剤が傷病名の診療開始日より先行する割合が偶然でない確率(p値)を算出した。 その結果,塩酸テルビナフィン(商品名ラミシール.アリルアミン系抗真菌薬)を投与された18人中14人が投与後に中毒性肝障害(ICD10コード,K71)で診療開始され,p値0.015と因果関係が濃厚であることが判明した。医薬品機構の自発報告のデータを比較したところ,肝障害はこの薬の既知の副作用であり,自発報告数は年々増加傾向にあった。 レセプトは業務データであり,分母が明確で率を計算できるという自発報告にはない優位性がある。本研究で開発した手法により医科レセプトの傷病名と調剤レセプトの薬剤名から因果関係の可能性のある有害事象の組み合わせを効果的に検出することが可能となった。
|