研究概要 |
薬毒物の毒性は致死量などで示されているが,この量と細胞死における薬毒物の濃度は一定の関係があるかどうか,血管内皮細胞を用いて,薬毒物毒性評価の可能性を研究した。血管内皮細胞を用いた細胞死の濃度は上記の4物質で各々,5,5,5及び0.1mMであった。その他57の薬毒物についても同細胞でスクリーニングした。それらの中で毒性が最も低かったものはメタノール2Mで最も高かったものは亜砒酸で0.01mMであった。一方ヒトの推定致死量を文献で調査したところ,メタンフェタミン,コカイン,フェノバルビタール及びパラコートで各々1.3-20,7-10,14-200及び14-40mg/kgであった。この値を比較のために単位をmg/Lと置き換えると濃度になり,各々の0.007-0.1,0.02-0.03,0.06-0.9,0.05-0.16mMと計算される。メタンフェタミン,コタイン,フェノバルビタールでは1/6から1/700の低濃度で個体では死亡していた。しかし,パラコートでは略同レベルの濃度であった。同様に他の40種の薬毒物で計算し,それらの値と血管内皮細胞の細胞死した濃度を比較したところ,それらの相関係数は0.310と低い相関であった。以上,物質の個体及び細胞への毒性は個々の物質により異なることが改めて示されたが,今回の結果からは薬毒物の毒性評価を推定するまでには至らなかった。今後さらに極々の因子の検索も含め詳細に調査することが必要と考えられた。
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