研究概要 |
ヒトマスト細胞が、IFN-γによって高親和性のIgG受容体を発現し(J Immunol,2000,164:4332)、その架橋によって、即時型のメディエーターのみならず、各種のサイトカイン、特にTNF-α,IL-1β,IL-6といったproinflammatory cytokineを多量に産生すること(J Immunol,2001,166:4705,Eur J Immunol,2001,31:3298)などを報告してきた。さらにFcγRIの架橋による、ヒトマスト細胞内情報伝達機構をFcεRIの架橋によるものと比較検討し、共通の系と異なる系を見いだした(Okayama Y, et al. Eur J Immunol,2003,33,1450)。顕著な差異はPI3 kinaseの活性化がFcγRIの架橋による脱顆粒には要求されるが、FcεRIの架橋による脱顆粒には要求されなかった。さらにNF-κB系のマスト細胞内情報伝達機構について検討した(J Immunol,2002,169:5287)。マスト細胞に発現するFcγRIの免疫系における役割を考察する目的にて、FcγRIあるいはFcεRIの架橋によってマスト細胞において発現の変動する遺伝子群を網羅的にDNAチップを用いて解析を行った。両者の遺伝子発現パターンは非常に似かよっていたが、異なる遺伝子群も同定された(Okayama Y, et al.投稿準備中)。また、Toll様受容体4(TLR4)がヒトマスト細胞に発現し、FcγRIと同様IFN-γによって発現と機能が増強することを報告した(Okumura S, et al. Blood,2003,102:2547)。以上より、ヒトマスト細胞に発現するFcγRIがTh1環境においてFcεRIとは異なった生理的、病理的役割を果たしていることが示唆された。
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